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NAO・・1

「ほらナオ、朝だよ、起きな、学校遅れるよ」

 いつものように沙也の元気な声が響く、目を擦りながら隣の部屋から直哉が顔を出した。

 「ママおはよ、今日の天気は?」

 沙也は直哉の着替えを出しながら答える、

 「おはよ、今日もナオの大好きな青空が沢山見えてるよ、さ、もうご飯できてるから顔洗って食べちゃいな」

 直哉はよっしゃあと言うと寝ぼけながら洗面所へと向かった。
 直哉は青空が大好きだ、毎日起きるたびに沙也に天気を聞いては一喜一憂する、その姿が沙也も大好きであった。

 近藤沙也は地元の不動産屋で事務をしながら直哉を育てているシングルマザーだ、彼女の年は三十一、直哉を二十三で産んだ時には既に旦那とは別れていた、それ以来彼氏も作らず直哉との生活に全てを捧げている、幸せな事は彼女にとって直哉との生活に全てを捧げる事が苦ではないという事であろう。

 「そんなに慌てて食べなくても大丈夫よ、まだ遅刻しないから」

 美味しそうに食べる直哉の姿に幸せを感じながら朝の支度をする、
 「いってきまぁす」

 「気を付けてね」

 いつもの様に直哉を送り出し自分も会社へと向かう。
 家から徒歩五分、町の小さな不動産屋で働き始めて二年、会社といっても老夫婦と彼女しかいない職場だがとても気に入っていた、子供のいない老夫婦にとって今や彼女は子供、直哉は孫のような存在になっている。

 「おはようございます」

 店に入ると仕事というより実家に帰ってきたような感覚になる、
 「はい、おはよう」

 優しい声で挨拶をかえすのは重さん、旦那である、

 「ナオは今日遅いの?」
 奥から妻の幸恵が声をかける、

 「今日は二時くらいには帰ってくると思いますよ」
 沙也が答えると、

 「じゃあ学校終わったら来るわね、美味しいお菓子もらったからナオと一緒に食べましょ」

 ほとんど毎日変わらない幸せな日々を沙也は過ごしていた、だが不幸は着実に彼女の元へと迫っていた。
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NAO・・2

「なんか足痛い」

 ある日の夜、寝る前に直哉が言った、

 「どっかにぶつけた?」

 沙也が聞くが直哉は首を振った、だが少し考え、
 「今日体育の時、跳び箱に当たったかも」

 それのせいよと沙也は直哉に言い聞かせた、

 「一応ママが次のお休みの日に病院行こうね」

 そう言うと直哉は頷き布団へと入って行った。

 そして次の日の夜また直哉が言った、
 「やっぱり足痛いよ」
 直哉は右膝を抑え話す、

 「明後日ママ休みだから病院行こうね」

 この時既にカウントダウンは始まっていた・・・


 
 その日もいつもの様に学校へ送り出し、会社へつくと直ぐに携帯電話が鳴った、

 「もしもし直哉君のお母様の携帯でしょうか?私直哉君の学校の担任の河野ですが」

 沙也は答える
 「はい、そうですが何かありましたでしょうか」

 「今直哉君が登校して来たのですが、足が痛いと直ぐに保健室へ行かせたのですが校医の話だと直ぐに病院へ行くべきとのことで今校医と共に○○病院へと向かっています」

 沙也の鼓動が一気に早くなる、

 「わ、わかりました、直ぐに私も向かいます」
 沙也は重さんに事情を話すと、

 「わかった、今車を取って来るから直ぐに行こう」

 そう言って車を出した。

NAO・・3

病院へつくと直哉は眠っていた、直哉の無事な姿に胸を撫で下ろすと医師、坂本に呼ばれる、

 「お母さん、直哉君最近足が痛い等、言ってましたか?」

 はい、沙也は頷く

 「そうですか・・・」

 沙也は堪らず問いかける
 「ナオは、ナオは何かの病気なのですか?」

 坂本はゆっくり頷く、
 「何の病気なんですか?治るんですよね?」

 沙也は興奮して立ち上がる
 「お母さん落ち着いて聞いてください、直哉君は骨肉腫と言う病気にかかっています」

 あまりのショックにふらつく沙也の肩を坂本が支える、
 「骨肉腫と言うのは聞いたことがあります、でも治るんですよね?」

 力なく坂本に問いかけると、
 「直哉君の場合、すでに外科的処置は難しいと思われます、残念ですが内科的処置による延命効果がどこまであるか、はっきりとはお答え出来かねます・・・」

 沙也は地面に崩れ落ちる

 「今直哉君は痛み止めを打ち眠っています、これからのことについてはまた彼が起きてからにしましょう」

 力なく部屋を出る、眠っている直哉の横に座り手を握ると涙がとめどなく溢れてくる、

 「なんでナオが、どうして」


 その言葉が繰り返し頭を巡り離れない、そこへ重さんが来た、重さんは沙也の姿を見て肩抱き寄せる、
 「重さん、ナオが、ナオが」

 沙也はそれ以上言葉を話す事が出来なかった、それからしばらくして沙也が少し落ち着きを取り戻すと、全てを聞いた重さんは

 「そうか・・・わかった、何かワシ等に出来ることがあれば何でも言いなさい」

 そう言ってまた優しく沙也を抱きしめた。

 沙也を残して帰ることに重さんは反対したが出来ることがあるわけでもなく彼は渋々帰って行った。

 沙也は直哉の横に座ると直哉の頭を撫でる、

 「ごめんね・・・ママのせいだよね・・・ナオが痛いって言った時すぐに病院に来ていれば・・・」

 直哉はゆっくり目を覚ます、

 「ママどうしたの?なんで泣いてるの?」

 沙也は慌てて涙を拭うと

 「何でもないよ、もう少し寝てていいんだよ」

 その言葉を絞り出すのが精いっぱいだった、

 「そっかぁ、じゃあもう少し寝よっと、足が痛くないから俺すぐ寝れちゃうよ」

 おどける直哉を見て涙を堪えきれなくなる、


 「ママ、もし俺が死んでも心配しないでね」


 直哉の突然の言葉に沙也が言葉を失くしていると


 「さっき夢でみたんだ俺は空にいて、ママと弟を守るんだ」


 そう言って直哉はニッコリ笑う、沙也は妊娠などしていないし、彼氏もいない、弟など出来るわけがないのだ

 「馬鹿ね、ナオは死んだりしない」

 沙也がそう言って直哉を抱きしめると直哉はまた眠りに落ちていった。きっと薬のせいね、沙也はきにすることなく直哉の頭を撫で自身も眠ってしまった。

NAO・・4

次の日朝一に坂本に呼び出された沙也、

 「きっと昨日の話は間違いだったのよ、そうに違いない」

 自分に言い聞かせるようにして診察室へと入る、直哉はまだ眠ったままだ、
 「失礼します」

 診察室のドアを開けた瞬間に沙也はまた崩れ落ちそうになる、坂本の表情、隣に立つ看護師の雰囲気が昨日よりも状況が悪くなっていることを物語っていた。

 「おかけください」

 坂本の言葉に力なく頷き椅子に座る、このまま逃げ出したい、耳をふさいでしまいたい、そんな感情をなんとか押し込め、

 「ナオはどうなんですか?」

 沙也は震える声で聞いた

 「今朝昨日の検査結果が出ました、本当に残念ですが・・・あとひと月は難しいと思われます・・・」

 沙也の頭の中に直哉との生活がぐるぐると回る、幸せな日々を思い浮かべたまま沙也は気を失っていた、一人息子が死ぬ、その現実を簡単には受け入れられるはずはないだろう。

 直哉の病室に寝かされた沙也は悲痛な叫びに目を覚ます、直哉が胸を抑え呻く

 「ナオ、どうしたの?苦しいの?今先生が来るよ」

 沙也は必死にナースコールを押す、飛び込んできた看護師は直哉の姿に慌てることなく処置をする。

 落ち着きを取り戻した直哉に沙也は言葉が出なかった、直哉は必死に闘っている、自分は慌てふためくことしか出来ないのか、自分の無力さをせめていると直哉は言った

 「ママ心配かけてごめんね、俺苦しくても大丈夫だからね、だからママ笑って」

 直哉の気丈な姿に涙が止まらない、だが不幸はそれでも止まらない・・・
 全身に転移がみられます、そう告げられたのは入院から三日目だった・・・
 それからたった二日・・・

「マ、ママ・・・あり・がと・う・俺・ママの・こと・・大好き・だよ・だから・・笑って・・」

 冷たくなっていく直哉を抱き抱え沙也は叫ぶ、


 「ナオ、ナオ、ママナオが居なかったら笑えないよ・・。ママを置いていかないでよ・・ナオ・・起きてよ・・」


 入院して五日、余りに早い病気の進行になすすべなく直哉は七歳という短い生涯を終えた・・・

NAO・・5

沙也にとって直哉を失くす大きさは筆舌に尽くしがたく、彼女から希望の全てを奪っていった、彼女は直哉との思い出から逃げるように仕事を辞め家に引きこもっていた、頭の中には直哉の姿、直哉の声ばかり、


「ママもう笑えないよ・・直哉・・」


 何度も自殺を考える、しかし直哉の最後の言葉が沙也を止める。


 だがどんな辛いことも時間、人の温かさによって薄れていく、沙也にとってそれは一人の男のおかげであった、ふさぎ込み希望を失くした沙也に献身的に声を掛けてくれた人、直哉の最後を見た医師、坂本であった、

彼は沙也と共に自分の無力を嘆いていた、坂本はゆっくりと沙也の心を温めていく、二年の時間を重ね、やっと沙也が笑顔を取り戻した頃二人は夫婦となっていた。

 そして沙也のお腹に新しい命を授かる、直哉の墓前に報告をし、やっと沙也にも新たな幸せが見えてきたように感じた、その日までは・・・
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